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ライブやスタジオで耳を守る「音楽用耳栓」3選

2011年1月31日

みなさんはライブやスタジオに行くとき、耳栓をしていますか?

これはオーディエンスとしてコンサート・ライブを聴きに行ったり日頃からイヤフォン・ヘッドフォンで大音量の音楽を聴かれている方と、ミュージシャン・音楽関係者としてステージやスタジオに立たれる方、両方へ向けた記事です。

大きな音は危険

ヒトの耳に限界を超えた大きな音が入ると、鼓膜の内側にある内耳の蝸牛(かぎゅう)というかたつむりのような形をした器官がダメージ(音響外傷)を受け、音が遠のいた感じや耳の痛みを感じます。そしてその後(一時的な)耳鳴りや聴力の低下が起こります。

Anatomy of the Human Ear ja.svg

By Anatomy_of_the_Human_Ear.svg: Chittka L, Brockmann
derivative work: Nesnad (talk) – Anatomy_of_the_Human_Ear.svg, CC BY-SA 3.0, Link

一時的なものであれば、爆発音などの突発的な大音量でない限り回復は見込めますが、音楽関係者やライブに頻繁に通う方、あるいはイヤフォン・ヘッドフォンで大音量の音楽を聴く習慣がある方のように日常的に大音量にさらされている方は、自覚症状がないうちに騒音性難聴と呼ばれる難聴が進行、つまり聴力が徐々に低下していくことがあり、こうなった場合回復は難しいケースが多いようです。

私の周りで日頃大音量に晒されている方のなかにも、スタジオ練習やライブの後突然耳鳴りがひどくなったり、音が響いたりという症状の方がいました。

筆者の場合
私も高校時代、狭い部屋に置いたドラムを長時間叩いたり、ある程度大きな音量でモニター(確認)しながら音楽制作をしたり、大音量の音楽をイヤフォン・ヘッドフォンで聴いたりということを日常的に行っていました。

するとある日突然耳の不快感に襲われ、一旦良くなったかのように思いましたがまた再発し、不快感のあまり一切音楽活動ができなくなり、数ヶ月に渡って入っていたすべての演奏予定をキャンセルしなければいけませんでした。ひどい時には人の笑い声でも耳に不快感が出たことがあり、もちろん楽器は何ヶ月も弾けないし、音楽すら聴けませんでした。このまま耳が聞こえなくなるのだろうか?と思ったこともありました。

幸いこれは数年をかけてゆっくりと回復しましたが、所属していたバンドのスタジオ練習では耳栓をしていても耳の不快感に襲われることが多く、仕方なく練習の後半にはよくスタジオを抜けさせてもらっていました。

こういった症状は音楽関係者やライブによく行く方の間で正しく知られておらず、知っていたとしても自分は大丈夫、と甘く見ていることが多いのではないでしょうか。それは耳栓をしている人がいかに少ないかが物語っています。

対処法

こうならないための対処法は、何と言っても「大きな音を聴かない」ことです。イヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴く場合は音量を下げればよいのですが、ライブやスタジオなど自分のコントロールがきかない状況では耳栓をするしかありません

ライブに行って耳栓をするなんて失礼なのでは?と思う気持ちもわかりますが、自分の耳の生死と比べたときにどちらか大切かで決めるとよいでしょう。そもそも耳栓はつけていてもほとんど分からないようなデザインのものが多いので、ご安心ください。

音量の表し方

まず、知っておくと便利な音の大きさの単位、dB(デジベル)をご紹介します。この数値が高いほど大きい音を表します。

音量の目安はこのとおりです。
()内は測定距離です。

10 dB 木の葉が擦れ合う音、呼吸の音
20-30 dB 静かな部屋
40-60 dB 話し声(1m)
60 dB テレビ(1m)
60-80 dB 乗用車(10m)
80-90 dB 大通り沿い(10m)
110 dB チェーンソー(1m)
110-140 dB ジェットエンジン(100m)
120 dB ブブゼラ(南アフリカのサッカー観戦でよく使われる管楽器)(1m)
130 dB トランペット(0.5m)
171 dB ライフル(1m)

工事現場にある騒音計もこのdBで表しています。

音楽ライブやスタジオ練習、クラブの場合、会場の特性やスピーカーの音量、スピーカーからの距離、演奏内容などで千差万別ですが、少なくとも90dB以上の音量に数時間晒され続けるケースが多いのではないかと思います。

一例として、EU加盟国では8時間の平均が85dBを超える環境で働く労働者には耳栓などの防具の着用が義務付けられています[1]。

よく見かけるスポンジタイプの耳栓は最大で30~35dBカットできるほど強力ですが、カットする音のバランスが悪い(例えば中くらいの音はあまりカットされないのに高い音だけカットされてこもった音になる)ため、演奏中に聞こえづらいパートがあったり、それをしたまま会話がしづらいことがあります。

音楽用耳栓

そこで音楽関係者や音楽好きの方には、音のバランスをなるべく損なわないように配慮して作られた音楽用の耳栓をおすすめします。

どれも手頃な価格なので最初の耳栓として強くおすすめします。音楽関係者や音楽好きの方へのプレゼントとしても良いかもしれません。

(1) Etymotic Research ER20 (ETY•Plugs)

アメリカ・イリノイ州の、イヤフォンや耳栓を専門とするメーカーEtymotic Research(エティモティック・リサーチ)のER20 ETY•Plugs。

私も10年ほど使っていますが、演奏のニュアンスや迫力は問題なく感じ取ることができ、耳栓をつけた状態でつけていない状態の音(実際に観客に届いている音)をイメージしながら音を出すこともできるようになりました。

ずっと耳を守ってきてくれた相棒として、とても愛着があります。

この耳栓の特徴
  • 聞こえる音のバランスに配慮しつつ、音量を平均20dBカットできる
  • 首に掛けられるヒモ付きなので失くしにくく、頻繁につけたり外したりする現場でも重宝する
  • 専用ケース付きなので、キーチェーンや楽器ケースに付けておくと忘れずに済む
  • (2) Alpine MusicSafe Pro

    オランダの耳栓専門メーカーAlpine(アルパイン)のMusicSafe Pro。Low(簡単な遮音)・Medium(中程度の遮音)・High(強力な遮音)という3種類のフィルターが付属するため、例えば演奏のニュアンスを正確に感じ取りたいときはLowを、ニュアンスよりも耳の保護を優先したい時はHighを、というように状況に応じて柔軟に対応できます。

    この耳栓の特徴
  • 聞こえる音のバランスに配慮しつつ、Lowなら平均17dB・Mediumなら平均19dB・Highなら平均20dBカットできる
  • 首に掛けられるヒモ付きなので失くしにくく、頻繁につけたり外したりする現場でも重宝する
  • 専用ケース付きなので、キーチェーンや楽器ケースに付けておくと忘れずに済む
  • (3) Thunderplugs Pro

    同じくオランダの耳栓専門メーカーThunderplugs(サンダープラグス)のPro。平均遮音18dBのフィルター”Normal”と26dBの”Pro”の2種類が付属します。どちらも高い遮音性能が特徴です。

    首に掛けられるヒモは付属しません。

    この耳栓の特徴
  • 聞こえる音のバランスに配慮しつつ、音量を平均18dBカットにするか平均26dBカットにするか選べる
  • 専用ケース付きなので、キーチェーンや楽器ケースに付けておくと忘れずに済む
  • 性能比較

    では、どれを選べばよいのでしょう?

    各メーカー公式の測定結果をもとに、上の3つの耳栓を周波数(音の高さ)ごとの遮音性能(どのくらい音を小さくできるか)で比較してみました。

    グラフのいちばん左が最も低い音、いちばん右が最も高い音で、線が下にあるほど遮音性能が低く(あまり音を遮れず)、上にあるほど高い(音をよく遮れる)といえます。

    この中ではThunderplugs Proで”Pro”フィルターを付けた場合の遮音性能が飛び抜けて高く、次に同じくThunderplugs Proの”Normal”フィルターという結果になっています。Normalフィルターは低い音の遮音性能が低く、高い音の遮音性能が高いので「こもった」音として聞こえそうです。

    確かに遮音性能が高ければ高いほど耳にとっては優しいですが、音楽関係者や音楽好きの方にとっては細かい音のニュアンスや迫力を犠牲にすることになるかもしれないため、一概に遮音性能が高いものだけがおすすめとは言えず、どの程度の遮音性を求めるかで選ぶ耳栓が変わってきます。

    Sensaphonics Musician’s Ear Plugs

    私は上でご紹介したER20とSensaphonics(センサフォニクス)のMusician’s Ear Plugsを併用しています。これは補聴器店などで耳型を採って作るオーダーメイドの耳栓(日本でも耳型を採って注文できます)で、音のバランスはほとんど変えずに音量だけ下げてくれるだけでなく、長時間つけていても耳が痛くなりにくく重宝しています。

    9dB・15dB・25dBカットのフィルターをそれぞれ左右別に選べるので、例えばヴァイオリニストは左耳用を15dBカット、右耳用を9dBカットというようにアレンジできます。少し値段は張りますが、一生耳を守れると思えば安いものです。

    まとめ

    正しく知られていないがゆえ、大音量の環境はなくなりません。となれば、耳は自分で守るしかありません。

    音楽に関わり、音楽を愛するすべての方へ、耳栓を強くおすすめします。

    参考文献・出典
    [1] Directive 2003/10/EC of the European Parliament and of the Council of 6 February 2003 on the minimum health and safety requirements regarding the exposure of workers to the risks arising from physical agents (noise)

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    筆者プロフィール
    profile

    小山和音(こやま・かずね)

    オランダ在住の音楽家。「評価しない・教えない・自分たちで作る」にフォーカスしたオンラインの音楽学校、音声や音楽に特化したソフトウェア開発、音や音楽を扱うワークショップや講座、音楽レッスン、作曲・即興演奏などを本業としています。

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