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音楽家の私がおすすめしたい「ライブ用耳栓」3選

公開 2011年1月31日
更新 2023年8月7日
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みなさんはライブやスタジオに行くとき、耳栓をしていますか?

この記事ではコンサート・ライブを聴きに行く方と、ミュージシャンとしてステージやスタジオに立たれる方の両方へ向けて、おすすめの「ライブ用耳栓」を3つご紹介しています。

ライブやスタジオでの演奏を意識して設計されているため、ふつうの耳栓では台無しになってしまうような音の細かいニュアンスを残したまま、音量だけ下げてくれるのがライブ用耳栓です。

もくじ

結論:ライブ用耳栓のおすすめはこの3つ

ライブやスタジオで耳を守るには、このような「ライブ用耳栓」をおすすめします。詳しくは記事の最後で解説します。

ライブで患った音響外傷は手遅れか?

ヒトの耳に限界を超えた大きな音が入ると、鼓膜の内側にある内耳の蝸牛(かぎゅう)というかたつむりのような形をした器官がダメージ(音響外傷)を受け、音が遠のいた感じや耳の痛みを感じます。そしてその後(一時的な)耳鳴りや聴力の低下が起こります。

Anatomy of the Human Ear ja.svg

一時的なものであれば、爆発音などの突発的な大音量でない限り回復は見込めますが、音楽関係者やライブに頻繁に通う方、あるいはイヤフォン・ヘッドフォンで大音量の音楽を聴く習慣がある方のように日常的に大音量にさらされている方は、自覚症状がないうちに騒音性難聴と呼ばれる難聴が進行、つまり聴力が徐々に低下していくことがあり、こうなった場合回復は難しいケースが多いようです。

筆者の周りで日頃大音量に晒されている方のなかにも、スタジオ練習やライブの後突然耳鳴りがひどくなったり、音が響いたりという症状の方がいました。もちろんその方々は耳栓をしていません。

こういった症状は音楽関係者やライブによく行く方の間で正しく知られておらず、知っていたとしても自分は大丈夫、と甘く見ていることが多いのではないでしょうか。それは耳栓をしている人がいかに少ないかが物語っています。

耳栓なしでドラムを叩いていた筆者の場合

筆者も高校時代、狭い部屋に置いたドラムを長時間叩いたり、ある程度大きな音量でモニター(確認)しながら音楽制作をしたり、大音量の音楽をイヤフォン・ヘッドフォンで聴いたりということを日常的に行っていました。

するとある日突然耳の不快感に襲われ、一旦良くなったと思いましたがまた再発し、不快感のあまり一切音楽活動ができなくなり、数ヶ月に渡って入っていたすべての演奏予定をキャンセルしなければいけませんでした。

表現が難しいのですが耳の管がまるで腫れ上がったかのような感覚に襲われ、これ以上音を聴くことが耐えられないような状態でした。

ひどい時には人の笑い声でもこの症状が出たことがあり、もちろん楽器は何ヶ月も弾けないし、音楽すら聴けません。このまま耳が聞こえなくなるのだろうか?という恐怖と闘う日々を過ごしました。

筆者はここで耳の使い方を反省してEtymotic Researchの耳栓「ER20」(下でご紹介します)を買い、なるべく大きい音を聞かないように注意しながら徐々に音楽活動を再開しました。

幸いこれは数年をかけてゆっくりと回復しましたが、ライブはもちろん、所属していたバンドのスタジオ練習では耳栓をしていても耳の不快感に襲われることが多く、仕方なく練習の後半にはよくスタジオを抜けさせてもらっていました。

趣味であればまだしも、音楽を本業としていた自分にとって音を長時間聴けないというのは死活問題であり、バンドの方々にも迷惑をかけてしまいました。

こうならないための唯一の方法は、「大きな音を聴かない」ことです。イヤフォンやヘッドフォンで音楽を聴く場合は音量を下げればよいのですが、ライブやスタジオなど自分のコントロールがきかない状況では耳栓をするしかありません。

目は閉じることができても耳は閉じられないので、これ以外に方法がありません

ライブで耳栓は失礼か?

「ライブで耳栓をするのは失礼なの?」と疑問に思う方が増えているようです。

「失礼だ」と誰かが言っていたとしたら、その方は一度でも音響外傷を負い、ステージに立てない悔しさや、ミュージシャンとしての仕事がなくなる不安、そして耳が聞こえなくなるかもしれないという恐怖を味わったことがあるでしょうか?

このような経験があって、そうならないための唯一のツールが耳栓だということを学んでいれば、間違ってもこんな発言はできないでしょう。

それに、「失礼」という感覚は主観的なもので、人それぞれ感じ方が違うものです。

たまたま「失礼」と感じる珍しい人に耳栓をしているところを見られたところで、私たちの人生には何の影響もありません。自分の耳の生死と比べたときにどちらか大切かで決めるとよいでしょう。

そもそもライブ用耳栓は、

  • 正面からほとんど見えないデザインのものが多いです。横から見ても目立たないものも珍しくありません。
  • 屋内のライブは特に客席側が暗いので、ステージから観客の方々はあまりよく見えません。

ということで、出演者から観客の方を見たときに、耳栓をしているかどうかはまずわかりません安心して耳栓をしてください

最近は公式グッズとしてライブ用耳栓の販売を始めた有名バンドもあるくらいなので、ミュージシャンやオーディエンスがようやく大音量の危険性に気づき始めたとも言えます。

耳栓を「マナー違反」としたり不快に思う音楽関係者は、認識が遅れていると言わざるをえません。そのような方は、自分の耳が壊れてからようやく過ちを認めることになります。

耳栓が必要な音量はどのくらい?

まず、耳栓を選ぶ上で知っておくと便利な音の大きさの単位、dB(デジベル)をご紹介します。この数値が高いほど大きい音です。

音量の目安はこのとおりで、()内は測定距離です。

10 dB木の葉が擦れ合う音、呼吸の音
20-30 dB静かな部屋
40-60 dB話し声(1m)
60 dBテレビ(1m)
60-80 dB乗用車(10m)
80-90 dB大通り沿い(10m)
110 dBチェーンソー(1m)
110-140 dBジェットエンジン(100m)
130 dBトランペット(0.5m)
171 dBライフル(1m)

日本の工事現場によくある「ただいまの騒音」(騒音計)も、このdBを使って音の大きさを表しています。

音楽ライブやスタジオ練習、クラブの場合、会場の特性やスピーカーの音量、スピーカーからの距離、演奏内容などによって様々ですが、少なくとも90dB以上の音量に数時間晒され続けるケースが多いのではないかと思います。

ステージに立つ演奏家であってもドラムや返し(モニター)からの大音量に常に晒されることになります。

一例として、EU加盟国では8時間の平均が85dBを超える環境で働く労働者には耳栓などの防具の着用が義務付けられています[1]ので、ライブやスタジオ練習、クラブなどは耳にとって危険な環境であると言えます。

よく見かけるスポンジタイプの耳栓は最大で30~35dBカットできますが、カットする音のバランスが悪い(例えば低めの音はあまりカットされないのに高い音だけカットされてこもった音になる)ため、演奏中に聞こえづらいパートがあったり、それをしたまま会話がしづらく、とても音楽向きとはいえません。

ライブ用耳栓のおすすめ

そこで音楽関係者や音楽好きの方には、音のバランスをなるべく損なわないように配慮して作られたライブ用の耳栓をおすすめします。

どれも手頃な価格ですので、最初のライブ用耳栓として強くおすすめします。音楽関係者や音楽好きの方へのプレゼントとしても良いかもしれません。

耳栓とイヤープラグの違い

耳栓を英語で言うとイヤープラグ(earplug)なので、耳栓=イヤープラグです。

ライブ用耳栓は国外メーカーのものが多いので「耳栓」ではなく「イヤープラグ」と表記されていることも多い印象ですが、どちらも機能に違いはありません(この記事では「耳栓」に統一しています)。

Etymotic Research ER20

アメリカ・イリノイ州の、イヤフォンや耳栓を専門とするメーカーEtymotic Research(エティモティック・リサーチ)のER20。

耳栓にしては少し高いですが、音のバランスがよい一級品です。

筆者も15年ほど使っていますが、演奏のニュアンスや迫力は問題なく感じ取ることができ、耳栓をつけた状態でつけていない状態の音(実際に観客に届いている音)をイメージしながら音を出すこともできるようになりました。

ずっと耳を守ってきてくれた相棒として、とても愛着があります。

  • 今回ご紹介する中では、音としていちばん音楽的なバランスを保ってくれます。
  • 専用ケース付きなので、キーチェーンや楽器ケースに付けておくと忘れずに済みます。

Alpine MusicSafe Pro

オランダの耳栓専門メーカーAlpine(アルパイン)のMusicSafe Pro。

これひとつで色々なシチュエーションに対応できる耳栓です。

White(簡単な遮音)・Silver(中程度の遮音)・Gold(強力な遮音)という3種類のフィルターが付属するため、例えば演奏のニュアンスを正確に感じ取りたいときはLowを、ニュアンスよりも耳の保護を優先したい時はHighを、というように状況に応じて柔軟に対応できます。

  • Goldフィルターを装着すれば、今回ご紹介する中で平均遮音レベルがいちばん高くなります。
  • 首に掛けられるヒモ付きなので失くしにくく、頻繁につけたり外したりする現場でも重宝します。
  • 専用ケース付きですが、四角形なのでしまう場所を選ぶかもしれません。

Bananaz Thunderplugs Classic

同じくオランダの耳栓専門メーカーBananazのThunderplugs Classic。

とにかく安く、カジュアルに持ち歩ける耳栓です。

上のAlpine MusicSafe Proと比べると低い音のカットは穏やかなため、低音をあまりカットしたくないシチュエーションではこちらがおすすめです。

  • とても安いです。
  • 首に掛けられるヒモは付属しません。
  • 付属する専用ケースが縦長なのでキーチェーンやバッグなど場所を選ばずに付けられます。

ライブ用耳栓の性能比較

各メーカー公式の測定結果をもとに、上の3つの耳栓を周波数(音の高さ)ごとの遮音性能(どのくらい音を小さくできるか)で比較してみました。

グラフの左に行くほど低い音、右に行くほど高い音で、線が下にあるほど遮音性能が低く(あまり音を遮れず)、上にあるほど高い(音をよく遮れる)といえます。

このグラフから、シチュエーション別に耳栓を選ぶとしたら…

  • 少し値段は張っても音のバランスを重視したいなら、ER20
  • シチュエーションによってフィルターを変えたいなら、MusicSafe Pro
  • 安くてカジュアルに使える耳栓なら、ThunderPlugs Classic

確かに遮音性能が高ければ高いほど耳にとっては優しいですが、音楽関係者や音楽好きの方にとっては細かい音のニュアンスや迫力を犠牲にする可能性があるため、一概に遮音性能が高いものだけがおすすめとは言えず、どの程度の遮音性を求めるかで選ぶ耳栓が変わってきます。

また、装着感も耳栓によって、また人それぞれの耳の形によって変わってくるため、こればかりは使ってみないと何とも言えません。

長時間でも疲れないプロ向けのライブ用耳栓

筆者は上でご紹介したER20をサブとして使っていますが、普段はSensaphonics(センサフォニクス)のMusician’s Ear Plugsを使っています。

このMusician’s Ear Plugsは補聴器店などで耳型を採って作るオーダーメイドのライブ用耳栓(日本でも耳型を採って注文できます)で、音のバランスはほとんど変えずに音量だけ下げてくれるだけでなく、自分の耳専用に作られているため長時間つけていても耳が痛くなりにくく重宝しています。

9dB・15dB・25dBカットのフィルターをそれぞれ左右別に選べるので、例えばヴァイオリニストは左耳用を15dBカット、右耳用を9dBカットというようにアレンジできます。

少し値段は張りますが、一生耳を守れると思えば安いものです。

また、この耳栓は肌色に近い色をしていて耳にすっぽり埋まるため、口を大きく動かしてもずれることがなく、装着していても外からはほとんど分かりません。写真映りを気にしなくても大丈夫です。

ただし上でご紹介した耳栓のように首からかけられるヒモは付けられないため、着脱の多い現場やさほど遮音の必要ない場面ではER20を使うようにしています。

まとめ

目は閉じられても、耳は閉じられません。

目をそむければ見えなくなりますが、耳をそむけても音は耳に入ってきます。

それなのに耳は目と同じように繊細です。

となれば、耳は自分で守るしかありません。手遅れにならないうちに。

音楽に関わり、音楽を愛するすべての方へ。
耳栓を強くおすすめします。

 
参考文献・出典
[1] Directive 2003/10/EC of the European Parliament and of the Council of 6 February 2003 on the minimum health and safety requirements regarding the exposure of workers to the risks arising from physical agents (noise)

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筆者
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小山和音
こやま・かずね

音楽教育の新しいかたち作り(創造性と個性を最優先に、音楽を教えず、評価せず、楽器や楽譜を自分でデザインしてゼロから音楽をつくるオンラインの音楽教室)と、音の生まれるしくみ作り(周囲の条件に反応して音楽や音声をリアルタイムに生み出すシステム開発)。

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