音が関わる作業(ライブ配信・ゲーム実況、YouTube、DTMなど)をするときに必要なマイクについてまとめました。
世の中にはたくさんのマイクがありますが、その中でもライブ配信やゲーム実況、YouTube、DTMなど、コンテンツを作って配信・公開するようなシーンでは、いわゆる「業務用」として作られた信頼できるマイクを使うことをおすすめします。
というのは、マイクそのものの音のバランスが悪い(音質が悪く聞こえる)、あるいは雑音が乗る状態で音を録ってしまうと、あとからそれを修正する手間が発生するし、何よりその修正がとても大変(状態によっては修正が不可能)なためです。
その業務用のマイクの中から、信頼のおける定番製品をご紹介します。
日本の音響機器メーカーaudio-technica(オーディオテクニカ)のAT4040は、クセがなく(音のバランスがよく)トークからボーカル、楽器の音まで音源の種類を選ばずに配信や収録などいろいろなシーンで使える、「間違いない」マイクのひとつです。
たいへん使いやすいマイクなので、ひとつ持っておけば、どれだけ本格的な配信や録音をするようになっても末永く愛用できる1本になるでしょう。
ただしこれはコンデンサーマイクと呼ばれる種類のマイクであり、外部電源(ファンタム電源)が必要、かつ湿気や衝撃に弱い構造のため、取り扱いに気をつけないとマイクを壊してしまう可能性があります。
AT4040についてはこちらの記事で詳しくレビューしています。
アメリカ・イリノイ州の音響機器メーカーShure(シュア)のSM58(通称ゴッパー)は、日本で(世界で?)いちばん普及しているマイクといってもよいでしょう。ライブを行う現場でこれが置いていないところはない、というほどの定番マイクです。
湿気や衝撃にも強い構造(ダイナミックマイク)でありファンタム電源も不要なので、ライブ配信でのトークがメインで、かつマイクの取り扱いに気を遣いたくない方には上のAT4040ではなくこちらをおすすめします。
ドイツのニーダーザクセン州に本社を置く音響機器メーカーSENNHEISER(ゼンハイザー)のeシリーズは、ShureのSMシリーズと並んでライブハウスやスタジオなどでよく見かける定番マイクのひとつです。
その定番マイクの中にe935という、上のSM58と比べるとややすっきりした印象のマイクがあるのですが、そのe935の指向性を強くした(音を拾う方向の範囲を狭くした)e945というモデルを取り上げました。
指向性が強いということは、マイクの向きや位置に少し気を遣う必要はありますが、そのぶん意図しない音(同じ部屋で鳴ってしまう物音など)が録音や配信に入りづらくなるため、そのあたりが気になる環境で使われる方にはこちらをおすすめします。
上でご紹介したマイクは、マイク本体のほかにもこのような機材を用意しなければいけません。
パソコンやスマホと上でご紹介したマイクは直接繋ぐことができません。パソコンやスマホのマイク端子に無理やり接続することはできますが、そこから入ってくる音ではマイクの性能が台無しです。
そこで、このような時には「オーディオインターフェース」と呼ばれる機器を使います。
オーディオインターフェースのおすすめはこちら。
マイクとオーディオインターフェースを繋ぐ(マイクからオーディオインターフェースへ音を送る)ためのケーブルも必要です。
通常、これは両側にXLR(通称キャノン)と呼ばれる端子がついたケーブルになります。
マイクスタンドといえば、このように床に置くタイプがスタンダードです。
デスクの上に置くタイプもあります。
クランプをデスクに固定してアームで自由に移動できるタイプもあります。YouTuberさんに人気なのがこのタイプです。
上でご紹介したAT4040などのコンデンサーマイクで会話やボーカルの収録をすると、パ行(パピプペポの音)を発音したときに空気のかたまりがマイクに当たって「ボフ」というノイズが乗りやすくなります。
これは、マイクと口の間にポップガードという網を立てる(マイクスタンドにクランプで取り付ける)ことで防ぐことができます。
上でご紹介したSM58(ダイナミックマイク)の場合は必要ありません。
コンデンサーマイクはとても感度が高いため、マイクスタンドに直接固定してしまうと、そのマイクスタンドが置かれている部屋の床を伝わってくる音(足音など)やマイクスタンドに触れたときの音を一緒に拾ってしまいます。
これは、マイクホルダーにあたる部分をショックマウントと呼ばれる部品に交換することで、マイクスタンド側からの振動がマイクに伝わりにくくなり、意図しない音が入ってしまうのを防ぐことができます。
こちらも、上でご紹介したSM58(ダイナミックマイク)の場合は必要ありません。
取り付け可能なショックマウントはマイクごとに違うため、マイクにショックマウントが付属するかを確認しておきましょう。上でご紹介したAT4040には下記のショックマウントが付属するので、別途用意する必要はありません。
空気の振動を電気信号に変換するしくみの違いで、マイクの種類もいくつかに分かれています。
コンデンサマイクは金属板とダイヤフラム(薄い金属の膜や金属を貼り付けたフィルム)を近づけて並べて、ダイヤフラムに振動を伝えることで振動を電気信号に変換するしくみです。
とても感度が高いため繊細な音も拾いますが、湿気や衝撃に弱いため管理に注意が必要なマイクでもあります。
レコーディングでよく使われるため、スタジオには必ず常備されています。
ダイナミックマイクは磁石の周りに導線を巻きつけたもので、磁石につながった振動板に振動が伝わると電流が流れるしくみです。
衝撃や湿気に強くライブでよく使われ、コンデンサマイクと比べても安いものが多いです。
圧電マイク(ピエゾ、クリスタルマイク、セラミックマイクとも)は圧力が加わると電圧が上がる圧電素子を使ったもので、楽器自体の振動を拾うので弦の種類を選ばず使うことができます。物体に密着させて使うので「コンタクトマイク」とも呼ばれます。
マイクが「音を拾う向き」を「指向性(しこうせい)」と呼びます。
上の図は、円の中央にマイクを置いて上から見たとき、どの方向の音を拾うかを表しています。図の左に行くほどが最も指向性が弱く(どの方向の音も拾う)、右に行くほど指向性が強い(非常に狭い範囲の音しか拾わない)ものになります。
マイクによってはこの指向性の切り替えができるものもあります。
全指向性(無指向性)は例えば自然の音(環境音)を録りたいとき、単一指向性は例えば少し離れた場所から鐘の音を録りたいとき、超指向性は例えば野外のインタビューや撮影などで人の声だけを拾いたいとき、というように使い分けができます。
どこかひとつの方向(マイクを向けた方向)の音を拾いやすいタイプです。音を拾う方向が狭くなるにしたがって「サブカーディオイド」→「カーディオイド」→「スーパーカーディオイド」→「ハイパーカーディオイド」→「ウルトラカーディオイド」と呼び方が変わっていきます。
カーディオイドは、マイクを向ける方向はあまり厳密でなくとも大丈夫です(マイクが向いている方向の音はしっかり拾います)。
あるひとつの方向の音と、その反対側の音の両方を拾いやすいタイプです。向かい合った状態の対談を1本のマイクで録りたい場合などに使います。
特に方向がない(どの方向の音でも拾いやすい)タイプです。
マイクが拾うことのできる音の高さの範囲です。ヘルツ(Hz)で表します。
下の数値が低く、上の数値が高いほど、低い音から高い音までまんべんなく拾うことができます。
縦軸の幅にもよりますが、基本的にこの線が平らなほど低い音から高い音まで均一(フラット)に拾うことのできるマイクだと言うことができます。
マイクの「音の拾いやすさ」です。デシベル(dB)で表します。この数値が高い(0に近い)ほどマイクで拾う音が大きくなります。
コンデンサーマイクでは、音を入れていない(無音の)状態でもマイク自体から雑音が発生します。
その雑音の大きさをセルフノイズレベルや等価雑音レベルと呼び、デシベル(dB SPL)で表します。この数値が小さいほど雑音の少ない音で録ることができます。
基準となる音を拾ったときの大きさと、音を入れない状態でマイク自体から発生する雑音の大きさの比率です。デシベル(dB)で表します。この数値が高いほど雑音の少ない音で録ることができます。
マイクが(音を歪ませずに)受け入れられる音の大きさの限界値です。デシベル(dB SPL)で表します。これを超える大きさの音をマイクに入れてしまうと、音が歪みます。
PADスイッチがあるマイクでは、PADスイッチをオンにしたときにこの最大入力音圧が上がります(より大きな音も録れるようになります)。
音(音声信号)の流れにくさです。オーム(Ω)で表します。
インピーダンスが小さいほどマイクの出力は大きく、ノイズに対して強くなりますが、その代わり消費電力が増えて効率は悪くなります。
一方インピーダンスが大きいほどマイクの出力は小さく、ノイズに弱くなりますが消費電力は小さくなり効率は良くなります。
上でご紹介したような普通のマイクではなく「USBマイク」というものも色々な音響機器メーカーから発売されており、よく見かけるようになりました。
これは、普通のマイクにオーディオインターフェースを内蔵してしまったようなもので、マイクを直接パソコンやスマホにUSBで接続するだけで使えます。
とても手軽で便利なのですが、ひとつ問題があるとすればこのUSBマイクの他にオーディオインターフェースを使っている場合、パソコンやスマホにUSBマイクとオーディオインターフェースを両方接続できたとしても、両方を同時に使えるとは限らないということです。
これは、パソコンやスマホ上のアプリには同時に複数のオーディオインターフェースを使えないものがあるためなのですが、USBマイクもオーディオインターフェースのひとつとして認識されるため、このような環境ではUSBマイクとオーディオインターフェースを同時に使うことができません(USBマイクはオーディオインターフェースには接続できません)。
例えばマイクはUSBマイク、スピーカーはオーディオインターフェースに接続した状態だとすると、入力と出力でそれぞれ別のオーディオインターフェースを指定できるアプリであれば問題ないのですが、ひとつしか指定できないアプリであればUSBマイクを使うときとスピーカーを使うとき、それぞれ毎回設定画面へ行ってドライバを切り替えて…というとても面倒な状態になってしまいます。
上でご紹介したような普通のマイクであればオーディオインターフェースに接続できるのでこういった問題は起こりませんが、もしUSBマイクを検討される際は、使いたいアプリが入力と出力で別のデバイス(ドライバ)を指定できるかをチェックしたほうがよいでしょう。
迷ったら、USBマイクは避けて普通のマイクを選ぶことをおすすめします。
モニタースピーカーはAmazonや楽天でも買うことができますが、あわせて価格をチェックしておきたいのが日本の楽器・音響機器の総合販売店であるサウンドハウスです。
オンラインで楽器や音響機器を買おうと思ったらサウンドハウスなしでは考えられないほど、関係者の間では定番の販売店です。
商品購入後14日以内に、他店でその商品がサウンドハウスより安く販売されている場合、差額を返金、もしくは次回利用時に割引する「最低価格保証」があります。
マイクはとにかく出回っている数が多く、音のキャラクターも様々です。そんな中、最初の1本を「誰もが知っているマイク」や「クセのないマイク」にしておくことで、次の1本が欲しくなったときに相談しやすくなります。
小山和音
こやま・かずね
音楽教育の新しいかたち作り(創造性と個性を最優先に、音楽を教えず、評価せず、楽器や楽譜を自分でデザインしてゼロから音楽をつくるオンラインの音楽教室)と、音の生まれるしくみ作り(周囲の条件に反応して音楽や音声をリアルタイムに生み出すシステム開発)。