音が関わる作業(ライブ配信・ゲーム実況、YouTubeの映像編集、DTM、ナレーションの録音など)をするときに必要なモニターヘッドホンのおすすめを3つご紹介します。
特にDTMではモニターヘッドホンがあればモニタースピーカーはいらないという意見もありますが、それについても解説します。
音楽を流して楽しむための(リスニング用の)ヘッドホンには、実は「味付け」がされています。
この「味」、コンテンツを作る側にとっては少々やっかいです。というのも、最初からこの「味」があるヘッドホンを使ってコンテンツを作ってしまうと、他のスピーカーやヘッドホンで聴いたときに、まったく想定していなかった味(音)になってしまう可能性があるためです。
そこで、世の中にはこの「味付け」をしないヘッドホンがあり、それらは「(スタジオ)モニターヘッドホン」と呼ばれています。ただし単純に「スタジオモニター」というとモニタースピーカーのほうを指すことが多いようです。
モニターヘッドホンはリスニング用のヘッドホンのように「快適に音を楽しむ」といったコンセプトではなく「業務用のチェックツール」のような存在のため、一般的に
という傾向があります。基本的にいわゆる「いい音」を目指して作られたものではないため、それを求めて買うものではありません。
とはいえ、世の中にはたくさんのモニターヘッドホンがあり、音もスペックもバラエティ豊かです。まずは定番の製品をまとめてみました。
日本でいちばん有名なヘッドホンといっても過言ではない、定番中の定番です。
レコーディングスタジオやテレビの収録など、音を扱う現場では必ずといってもよいほど見かけます。音はとても硬いですが、そのぶん音の細かい部分や入り込んだノイズなどを探し出すのに向いています。
MDR-CD900STについては下記の記事で詳しくレビューしています。
こちらは日本国内だけでなく海外の現場でもよく使われている定番ヘッドホンです。
上の900STで見えにくい低音域がよく見え、カールコード×ミニプラグで折りたたみも可能と、900STよりも汎用性が高く扱いやすいヘッドホンです。
この記事でご紹介している中では一番安く、レコーディングからミキシング、ビデオ通話や配信まで対応できる最初の1台としてもおすすめできます。
MDR-CD900STはどちらかというと圧倒的なユーザーの多さが理由で使われていますが、単純に機能・スペック・価格で比べるならこちらのMDR-7506が上回っています。
日本の音響機器メーカーaudio-technica(オーディオテクニカ)のATH-M50xは、DTM(音楽制作)をされる方の間で知名度のあるヘッドホンです。
今回ご紹介する中では唯一、ケーブルの着脱(本体からケーブルを切り離す)に対応しているため、万が一ケーブルやプラグが破損した場合でも、本体を買い替えることなく使い続けることができます。
ケーブルはなんと下記の3種類が付属するため、シチュエーションや好みに合わせて柔軟な使い分けが可能です。
他にもハウジングが90度反転して片耳モニタリングに対応するなどユニークな特徴もあります。
同価格帯(2万円周辺)で人気のモニターヘッドホンと比較してみました。
ただ、実際どのような音が出るかはスペックからは見えづらく、再生する音源、組み合わせるオーディオインターフェース、電源、聴く人の年齢や耳の形など様々な要素が影響するため、あくまでも参考程度にお考えください。
タイプ | 周波数特性 [Hz – kHz] | ケーブル | プラグ | 折りたたみ | 重さ [g] | 価格帯 [万円] | |
SONY MDR-CD900ST | 密閉型 | 5 – 30 | ストレート 着脱不可 | 標準 | 不可 | 200 | 1.5 |
audio-technica ATH-M50x | 密閉型 | 15 – 28 | ストレート/カール 着脱可 | ミニ (標準アダプタ付属) | 可 | 285 | 1.9 |
SONY MDR-7506 | 密閉型 | 10 – 20 | カール 着脱不可 | ミニ (標準アダプタ付属) | 可 | 230 | 1.0 |
AKG K712 PRO | 開放型 | 10 – 39.8 | ストレート 着脱可 | ミニ (標準アダプタ付属) | 不可 | 298 | 2.7 |
YAMAHA HPH-MT8 | 密閉型 | 15 – 28 | ストレート 着脱式 | ミニ (標準アダプタ付属) | 可 | 350 | 2.7 |
ドーナツ型の磁石の穴の部分に通されたボイスコイル(導線を巻いた紙やプラスチック)に電流を流すとボイスコイルが前後に動き、そこに繋がれた振動板が空気を振動させます。
ダイナミックマイクと構造は同じで、電流の向きが逆になっただけです。
今回ご紹介した3機種はすべてこのダイナミック方式です。
ボイスコイルの片方が固定されていて、もう片方が固定されておらずその周囲に磁石が設置されており、この固定されていない部分に繋がれた振動板が空気を振動させます。
ダイナミック方式に比べて小型化できるため、ヘッドホンではなくイヤホンで採用されています。
ほとんど見かけませんが圧電ピックアップと構造は同じで、電流を流すと圧電素子が振動する性質を利用したものです。
密閉型は、スピーカーユニットの裏側が密閉されているタイプです。よほどの大音量でない限り、装着している本人にしか音は聞こえません。
ヘッドホンによるため一概には言えませんが、下の「開放型」に比べると低い音の再現に強みを持ったヘッドホンが多い印象です。
この記事でご紹介しているヘッドホンはすべてこちらの密閉型ですので、ヘッドホンから漏れた音がマイクに入り、録音や配信に意図しない音が入り込んでしまうこともありません。
開放型は、スピーカーユニットの裏側が密閉されていないタイプです。ヘッドフォンを装着している本人以外にも音がよく聞こえます。
こちらもヘッドホンによりますが、上の密閉型に比べると、高い音の伸びや自然な再現に強いヘッドホンが多い印象です。
ただしこちらはヘッドホンから音を「漏らす」構造のため、ヘッドホンを使いながらマイクで録音や配信を行う場合は、意図しない音が入り込んでしまいますのでおすすめできません。
モニターヘッドホンはAmazonや楽天でも買うことができますが、あわせて価格をチェックしておきたいのが日本の楽器・音響機器の総合販売店であるサウンドハウスです。
オンラインで楽器や音響機器を買おうと思ったらサウンドハウスなしでは考えられないほど、関係者の間では定番の販売店です。
商品購入後14日以内に、他店でその商品がサウンドハウスより安く販売されている場合、差額を返金、もしくは次回利用時に割引する「最低価格保証」があります。
ヘッドホンとスピーカーのどちらがよいかは、目的と状況によります。
スピーカーの音を出しても周りに迷惑がかからない環境であれば大丈夫ですが、その点で安心ができない場合はヘッドホンを優先して探してみましょう。
YouTube動画の収録や楽器演奏のレコーディングなどでマイクの音声をモニタリングする時や、ライブ配信やゲーム実況など音を聴きながらマイクを使いたい時にスピーカーを使っていると、スピーカーから出た音がマイクに拾われてしまいます。
そうすると収録やレコーディングでは録れた音が二重に聞こえてしまったり、配信や実況では不要な音まで配信されてしまい、どちらもクオリティが低いような印象を与えてしまうことがあるので、そのような場合は(密閉型の)ヘッドホンをおすすめします。
一方で、ヘッドホンは長時間の作業では疲れやすかったり、耳への負担が大きいという問題点もあります。基本的にマイクを使っていない時のモニタリングはスピーカーを使って問題ありません。おすすめのスピーカーはこちら。
モニターヘッドホンはパソコンやスマホに直接接続できるものが多いですが、せっかくよいヘッドホンを買ったのであれば、その性能を十分活かすために「オーディオインターフェース」を用意したいところです。
オーディオインターフェースは、USBやThunderboltでパソコンやスマホと繋ぐ「音の出入り口」のようなものです。オーディオインターフェースのおすすめはこちら。
オーディオインターフェースのおすすめ2選【配信・YouTube・DTM】
ヘッドホンはデスクに置いておけますが、なにかとスペースをとるので、このようなヘッドホンハンガーを用意しておくとデスクの上がすっきり広く使えます。
K&Mの16085というヘッドホンハンガーはデスクの天板や脚、マイクスタンドなど様々な場所に取り付けることができます。ヘッドホンを置く部分をクランプに取り付けるためのネジ穴が3ヵ所あるので、色々なパターンを試しながら快適な位置を決めることができます。
色々とご紹介しましたが、こういった機材は日頃から目に入るところに置いておくものですので、配信や制作のモチベーションを保つためにも、シンプルに見た目が好みかどうかで選んでしまってもよいかと思います。
もう少し違ったものが欲しい、組み合わせに自信がないなどの場合はお気軽にご相談ください。
小山和音
こやま・かずね
世界にひとつだけのオリジナルの楽器をデザインし、五線譜ではない楽譜やドレミではない音律をグループで話し合って作り、それらを使って音楽をゼロから創作する音楽教育プログラムを中心に、音(楽)にまつわるユニークな取り組みをしています。お仕事のご依頼やコラボレーションのご提案など、お気軽に!