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ニュートラル音楽メソッド
創造的な音楽表現のための考え方

ニュートラル音楽メソッド(NMM)は「上手い」「下手」「正しい」「間違い」などといった評価・判断によらず、楽器、楽譜、音楽理論、そして音楽そのものを自分たちでデザインして創ることにより音楽表現における創造性を最大限発揮させるための、小山和音によってまとめられた考え方です。

ニュートラル音楽メソッドでは音楽を「かたちのある音楽」と「かたちのない音楽」の二つに分けて考えます。「かたちのある音楽」は受け継がれている音楽の文化、つまりそこには上手い・下手、正しい・間違い、良い・悪いなどという価値観や自然と継承・共有されてきた曲、楽器、楽譜、音楽理論などがありますが、「かたちのない音楽」はどの文化にも属さない(ニュートラル)、つまりそういった価値観や曲、楽器、楽譜、音楽理論などは存在しません

現代、少なくとも日本や欧米で生活していると「かたちのある音楽」の影響を受けることになりますが、ニュートラル音楽メソッドはそれとは別に「かたちのある音楽」からの影響を可能な限り少なくした「かたちのない音楽」という新しい領域を作ります。

人類は、分かっているだけでも数万年に渡って様々な場所で様々な音楽文化を受け継いてきましたが、同時に上手い・下手、正しい・間違い、良い・悪いなどという価値観や曲、楽器、楽譜、音楽理論などという枠組みも自然と継承・共有されてきました。それはある音楽文化の「浄化」には役立ってきたかもしれませんが、同時に人それぞれの創造性を最大限発揮できない環境を作り上げてきたのかもしれません。ニュートラル音楽メソッドでは、人間が作り上げた音楽文化によって忘れられた人間本来の音楽の感覚があるという仮定で、それを再発見することを目標とします。

ニュートラル音楽メソッドは既存の音楽文化を否定するものではなく、むしろそこに応用できる考え方であり、さらには音楽という枠組みを越えて、生きていく上での物事の考え方・捉え方の選択肢を増やすものです。

オンラインの音楽学校「音楽キッチン」やそれを2時間のワークショップにまとめた「音楽をつくる」はこのメソッドを基に作られています。

このメソッドは主に音楽教室や音楽学校、音楽の授業などの音楽教育に携わる方に向けたものであり、どなたでも自由に採用したり解釈し直したりすることができます。 このメソッドを使ったレッスン・講義・授業・ワークショップなどへの参加者の年齢制限は特にありません。

原則

参加者の純粋で自然な感覚を守り、創造的・本能的な表現を促すため、以下の原則を設けています。

1 教えない

典型的な音楽教育では教師が「生徒は持つべきものを持っていない」と考え、自らの主観(好みや感覚、価値観など)と客観(誰が見ても明らかな事実)を混同して生徒に提示するため、生徒が本来持っていた感覚が失われるということも起こりえます。

ニュートラル音楽メソッドの下では、教師ではなく一人ひとりの表現をファシリテートする(妨げないように手助けする)ファシリテーターが進行役を務め、教えるのではなく参加者がすでに持っている音楽の感覚や表現をいかに引き出すかを重視します。他人に対して物事を提示するときは、主観と客観の分離を徹底します。ファシリテーターと参加者はそれぞれが対等な立場で主観と客観を分けて考えることで、人が本来持っている感覚への影響を最小限に抑えることができます。

2 評価しない

典型的な音楽教育では、音楽表現や音楽家に対して次のような評価・判断・分類が行われ、それをもとにヒエラルキー構造のようなものが形作られています。

技術・レベル
上手い・下手・ちゃんとした・上達・初心者・入門・基礎

クオリティ・正統性・模範性
良い・悪い・正しい・間違った・ちゃんとした・名曲・本物・お手本・一流の・偉大な・王道・常識・暗黙の了解・邪道

才能
天才・凡人

音楽性・芸術性
音楽的な・芸術性の高い

ニュートラル音楽メソッドの下では、音楽表現においてこのような評価・判断・分類が行われることはなく、これらが客観(事実)のように扱われるようなことはありません。また、「〜ですね」や「〜だと思いませんか」などと同意を求めることも行われません。ファシリテーターも含めてすべての参加者は同じラインに立ち、対等な立場で相互に考えや作ったものを共有し合うことができます。

3 自分たちで作る

典型的な音楽教育では、何の理由もなくピアノやギターなどの既存の楽器、五線譜などの既存の楽譜、そして西洋音楽理論をベースに作られた既存の曲を扱い、人が創造的になることができる絶好の機会を必要以上に限定しています。

ニュートラル音楽メソッドの下では既存の曲・楽器・楽譜・音楽理論・価値観などを可能な限り持ち込まず、先入観を捨て、自分たちの力で音楽文化を創り上げていくことを重視します。そのため参加者が既存の音楽の知識や経験を持っているかどうかは関係なく、参加するにあたって必要とするものはありません。