AT2020などのコンデンサーマイクはその構造上、保管に気をつけたい音響機器のひとつです。
この記事ではその理由と対策を解説します。
結論からいえば、おすすめしません。
コンデンサーマイクは湿気や衝撃に弱いとされているためです。
その理由はコンデンサーマイクの構造にあります。
コンデンサーマイクの中には、「ダイアフラム」と呼ばれる金属の膜(あるいは金属膜を貼り付けたフィルムなど)と、それに重なるように「バックプレート」と呼ばれる金属の板が入っています。
マイクに音(振動)が入ってくると表側にあるダイアフラムが振動して、その裏側にあるバックプレートとの距離が微妙に変わります。
そこに電圧をかけると、マイクに入ってきた音(振動)を電圧として取り出すことができる、というしくみです。
しかしこのダイアフラムとバックプレートのあいだの距離はわずか数十マイクロメートル(0.0xミリメートル)とのこと。
空気中の湿気(細かい水滴)がこの隙間に入り込んだ場合や、衝撃などによりダイアフラムとバックプレートの距離が狂ってしまった場合は、正しく音を取り出すことができなくなります(=マイクが壊れたのと同じです)。
実際私の友人もコンデンサーマイクを出しっぱなしにしておいたところ、録った音に「パチッ」というノイズが乗るようになってしまった、と話していました。
ということで、コンデンサーマイクをお持ちのみなさんにおすすめしたい方法はこのとおりです。
コスト | 防湿度 | 耐衝撃 | メリット | デメリット | |
除湿剤+ ジッパー袋 | ★☆☆ | ★☆☆ | ★☆☆ | 安い | 見た目がよくない、定期的に湿度チェックと除湿剤の取り替えが必要 |
除湿剤+ ドライボックス | ★★☆ | ★★☆ | ★★☆ | わりと安い | 定期的に湿度チェックと除湿剤の取り替えが必要 |
防湿庫 (デシケーター) | ★★★ | ★★★ | ★★★ | 定期的なチェックや メンテナンスは不要 | 高い(初期費用だけ) |
部屋の除湿 | ★★★ | ★★★ | ー | マイクを出しっぱなしにできる | 高い(初期費用と電気代) |
このような除湿剤をジッパー付きの袋に入れて、その中にマイクを保管するのがいちばん手っ取り早い方法です。
ただ、これはあまり見た目が美しくなく、しかもジッパーの隙間から湿気が少しずつ侵入してくるため、こまめに除湿剤を取り替える必要があります。
内部の除湿を目的として作られた箱であるドライボックスは、電気式の防湿庫ほどではありませんが一定の防湿効果を発揮します。
コンデンサーマイクと同じく湿気に弱いカメラのレンズ向けに作られているものが多いですが、マイクの保管にも適しています。
自宅やスタジオの保管のほか、多湿な時期にマイクを外に持ち出す場合はこの方法がおすすめです。
防湿庫(デシケーター)は、電気を使って庫内を常に乾燥した状態にしておくことができる機器です。
電気といっても、信頼できるメーカーのものを選べば電気代はほとんどかかりません。
例えば東洋リビングは1974年に世界で初めて電子ドライユニットを開発し、それから今に至るまで半世紀にわたって防湿庫を作り続けている歴史あるメーカーですが、その代表的モデル「ED-80CATP2」の平均消費電力は0.9Wで、電気代の目安は1日1円以下とのことです。
筆者もデスクの脇に置いて使っていますが、冷蔵庫や除湿機のような運転音もまったくないので、ちゃんと動いているか不安になるほど静かです(ちゃんと動いています)。電気代の変化も感じません。
ドアはガラス製なので、ドアを閉めた状態でも庫内がよく見えます。マイクを最適な環境に保管しながら日々眺められる…所有欲を掻き立てられます。
庫内にはアナログの湿度計が内蔵されており、適切な湿度にしっかりとキープされています。
また、除湿された状態でコンセントを抜いて数週間放置したとしても、ドアの開け閉めをしなければほとんど湿度は変化しないため、湿気を通さないしっかりとしたドアであることがうかがえます。
また、カメラのレンズを想定した段には波形の(筒状のものが収まる)スポンジが付属していますので、カメラのレンズと同じようなサイズのコンデンサーマイクもここに収まります。
扉は付属の鍵でロックできるので、お子さまのいたずら防止や防犯の面でも安心感があります。
カメラのレンズなど他にも湿気に弱いものをお持ちの場合は、少し大きめのモデルを選んで一緒に入れておいても便利です。
使うときだけ出すにしても、湿度の高い部屋では不安がありますので、マイクを使う部屋は除湿しておくとさらに安心です。
また、適切な湿度さえ保てるのであればコンデンサーマイクを出しっぱなしにしても不安はありません。
音楽制作時にも気になりにくい「静かな」除湿機についてはこちらの記事で5機種ご紹介しています。
小山和音
こやま・かずね
世界にひとつだけのオリジナルの楽器をデザインし、五線譜ではない楽譜やドレミではない音律をグループで話し合って作り、それらを使って音楽をゼロから創作する音楽教育プログラムを中心に、音(楽)にまつわるユニークな取り組みをしています。お仕事のご依頼やコラボレーションのご提案など、お気軽に!