このようなご相談をいただくことがあるので、Q&Aのひとつとして公開します。
少しでも参考にしていただければ幸いです。
正しい音が出せずに困っています(自分の出している音が合っているか、正しいかどうかがわかりません)。どうしたらよいでしょうか?
このような場合はまず「正しい音」とは何かを考えてみる必要があります。
質問者さまにとって「正しい音」とは何でしょうか?
世間では「正しい音」という言葉が当たり前のように使われているので、ほとんどの方はそもそも何が「正しい音」なのかを考えず、曖昧なまま話を進めてしまいがちです。
よく「正しい」かどうかの基準にされる音楽理論(12平均律)は、日本の音楽の標準とされるようになってからせいぜい150年で、それ以前の音楽の捉え方は現代とはまた違うものだったようです。
この12平均律は世界中に普及しているので完璧な理論だと思われがちですが、12平均律で出す音の組み合わせと自然界の(物理的な)振動の組み合わせには微妙なズレがあり、これは不自然なしくみでもあります。
しかしそこには目をつぶりましょう、ということで過去150年その仕組みが使われてきました。
この不自然なしくみに沿った音を「正しい」とする人もいれば、他のしくみを「正しい」とする人もいます。
世の中にはいろいろな捉え方がありますので、私としてはどれかを肯定してどれかを否定するというわけではありません(私の中に「正しい音」や「間違った音」というものは存在しません)。
人間は生き物ですので、機械と違って常に同じ結果を出し続けられるはずはなく、その日の天気やお腹の空き具合によって、人間が決めた枠組みから少し外れることはごく自然なことです。
ですので、私の視点から考えると現代の基準で「正しい」とされている音を追求することは、まるで「不自然な」「その人らしくない」音を追求しているかのように思えてしまいます。
質問者さまがご自分らしい・ご自分ならではの音を追求されたいと思われているのならば、「正しい」とされている音を追い求める必要はないと考えています。
逆にジャズやクラシックなど特定の伝統文化の中の「正しい音」を追求される場合でも「正しい音」が何を指すかは人によって違います。
誰もが「正しい音」を「正確に」出すことができるのであれば、それをわざわざ人間が演奏することに意味はあるのでしょうか?
あなたらしい音はあなたにしか出せません。
せっかくあなたという人間が音楽をやっているのなら、「正しい音」が何かを考えるよりもやはり「自分らしい音」を追求される方が、より音楽の本質に近いと思います。
小山和音
こやま・かずね
音楽教育の新しいかたち作り(創造性と個性を最優先に、音楽を教えず、評価せず、楽器や楽譜を自分でデザインしてゼロから音楽をつくるオンラインの音楽教室)と、音の生まれるしくみ作り(周囲の条件に反応して音楽や音声をリアルタイムに生み出すシステム開発)。