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音楽を生み出すのに「才能」は必要か?

2019年3月8日

「音楽の才能」…こんな言葉を、おそらくあなたも聞いたことがあると思います。

音楽を生み出すのに「才能」は必要でしょうか?今回はそれをご一緒に考えていきましょう。

学校の音楽の授業や音楽学校はもちろん、オンラインストア、音楽の雑誌などでも、様々な(有名な)音楽家が扱われています。

このようなものを見続けていると、ここに載っている人たちには「才能」「素質」があり、それ以外の人々は「才能のない人」のように見えてしまうかもしれません。確かに音楽教師や音楽家にはそのような考え方、つまり音楽を生み出すには才能が必要だと考える人もおり、中には「あなたには才能がない」と言うような人までいます。

悲しいことに音楽の世界には音楽家にしろ音楽教師にしろ、主観と客観を混同してあたかも自分の主観が正解であるかのように振舞っている人が多いため、そのような環境で他人の色に染まることなく自分らしさを守るには、まず物事を客観視していく必要があります。

「才能」とは?

そのような捉え方をした上で、「才能」という言葉について考えてみましょう。辞書には「物事をうまくこなす素質や能力」というような説明があり、これは私たちの認識とほぼ同じかと思います。ということは音楽において「才能がある」と言った場合、一般的には「音楽が上手い」という認識になります。

例えば言語であれば、人それぞれ受け取る言葉(ニュアンス)の違いは多少あるにせよ「意味が伝わる」という誰が見ても明らかな客観的な事実があるため、細かいところまでたくさんの意味を伝えられる方を「上手い」、そうでない方を「下手」という具合に評価することができます。

音楽の評価…?

ところが言語と違って音楽そのものに意味は含まれておらず、音楽の中のどの事実から「上手い」か「下手」かを評価するかは人や文化によって大きく違い、しかもその人の好みなど主観の占める割合が大きいため、客観的な評価基準(上手いとか下手とか)というのは本来作ることはできないはずです。それがあるように思えてしまうのも無理はありませんが、それは主観をあたかも客観であるかのように扱っている人(例えば「この音楽家は素晴らしい」と言っている音楽教師)があまりにも多いためです。

「才能があるかどうか」

すなわち「才能があるかないか」という絶対的な評価も存在しないため、音楽を生み出すのに才能は必要かという問いには意味がありません。したがって、他人からあなたの「才能」について意見されたとしても、耳を貸す必要はありません。

また「才能」という言葉には素質、つまり生まれながらにして持っている性質という意味がありますが、先ほどの例と同様、これも優劣で判断できるようなものではありません。確かに人それぞれ生まれ持った表現に違いがあるかもしれませんが、それはいわば個性であって、才能の有無というような単純なものさしで測ることはできません。

評価をしない、ということ

筆者は、人が音楽を生み出すお手伝いをする立場にある者として、「才能」「上手い」「下手」といった評価を一切しません。もう少し正確に言うと「才能」「上手い」「下手」というものさしは筆者の中に存在せず、他人から言われた言葉はその人の中にしか存在しないものとして客観的に聞き流します。

もちろんこのような主観を表に出すのは自由ですが、それは場合によっては人に潜在的な影響を与えるし、多くの人が同じことをすれば社会にも影響を与えます。「才能」という言葉が一部の人々を音楽から遠ざけ、音楽家と聴き手という溝を作り出していることを考えると、このような言葉は使わないようにした方が一人一人が表現できる幅や可能性は広まる、と筆者は考えています。

まずは客観視するクセを

それによって「天才」とされている音楽家は世の中にたくさんいますが、「多くの人が言っているんだから良いに決まっている」と盲目になってしまい、ここでもつい主観と客観を混同しがちです。自分らしさを忘れないために大切なことは、このようにあたかも事実や暗黙の了解、当たり前であるかのように扱われていることも、まずは客観視してみることです。そうすることで自分の主観を人々の主観からしっかりと分けることができ、結果的に自分の音楽を大切にすることにつながります。

ご自分のことを「才能がない」と思われている方も同様で、まずその「才能」というものさし自体が社会によってつくられた思い込みであると考えてみてください。客観的に音楽を見てみれば、音楽というのは音、つまり物理的にはただの振動であって、そこには「上手い」も「下手」も「才能」もないのです。音楽はただの「音」で、それは人の中に入って初めて「音楽」になるのですから。

「才能」などということを考えずに、もっと気軽に、心から音楽を楽しんでみましょう。

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筆者プロフィール
profile

小山和音
こやま・かずね

音楽家。「評価しない・教えない・自分たちで作る」にフォーカスしたオンラインの音楽学校、音声や音楽に特化したソフトウェア開発、音や音楽を扱うワークショップや講座、音楽レッスン、作曲・即興演奏などを本業としています。

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