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「リズム感」は必要か?

公開 2021年4月17日
更新 2022年8月10日
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これは、「私はリズム感がないので音楽は無理」「こどもにちゃんとしたリズム感を身につけさせたい」という方へぜひお読みいただきたい記事です。

部屋の外から「ドン」という音が聞こえたとしましょう。これだけでは、ただの物音ですね。でも、これが「ドン、ドン、ドン、ドン」と規則的に聞こえてきたらどうでしょうか?ご近所さんや、通りがかりの車から流れてくる音楽の音漏れ?と思うかもしれません。

もくじ

「音」と「音楽」の境界線

筆者は、このようにただの「音」を「音楽」に変える要素のひとつが「パターン(規則性)」だと考えています。

このパターンは「ある」か「ない」かというよりは、「単純」か「複雑」かで考えるとわかりやすいかもしれません。

例えば私たちが聴く音楽は繰り返しがはっきりしていてわかりやすいので「単純な」パターン、鳥の声はそうでもないので「複雑な」パターン、という具合です。

私たちは「単純なパターン=音楽的なもの」と教えられて育ったので、複雑なパターンをもつ音の集まりを「音楽的ではない」と感じるかもしれません。

「リズム感」とは何なのか

その複雑なパターンをみる考え方のひとつに「リズム」がありますが、特に日本では、パターンが単純(均一)なほど「リズム感がある(よい)」とされがちです。

これは間接的にそれ以外(たとえばさきほどの「複雑なパターン」)を否定しているようなものです。もしあなたの持ち味が「複雑なパターン」だったとしたら、おそらくあなたは「リズム感がない(悪い)」と言われてしまうでしょう。

「拍子がわからない」のも個性

しかし、「リズム感」というのは人間が他人を評価するために作った基準のようなもので、もともとは存在しませんでした。そもそも人の感覚というのは「リズム感がある・ない(よい・悪い)」という乱暴な言葉で片付けられるようなものではありません。

特に日本では「拍子(リズム)がわからない(うまく捉えられない)」ことを「劣っている」「練習不足」とする傾向がありますが、これは「均一なパターンを捉えるのが得意な人」を高く評価しているということであり、たまたまそうでない感覚を持つ人に対してとても失礼な考え方です。

そのような方は、自然なゆらぎを捉えるほうが得意という個性を持っている可能性があります。その個性をわざわざ塗り替えて「みんな同じ」「正しい音楽の感覚」へ誘導しようとするのが典型的な日本の音楽教育です。

ですので、ご自身の感覚がどうであっても、自信を持って大丈夫です。お子さまがいる場合は、どうかその生まれ持った感覚を大切にしてあげてください。

頭の中の感覚と、表に出す作業は別

ちなみに、人が出す音はおもに

  • 頭の中に音が浮かんでから表に出てくる(たとえば手で箱を叩く)
  • 先に表に出たり、他の人が出す音を聴いたりして、それに反応して表に出る

という2通りがありますが、この「頭の中に浮かぶ音」と「表に出す音」は、一致していることもあるし、そうでないこともあります。

頭の中で鳴った音のパターンをうまく表に出せていないと感じるなら、そこで初めて「練習」をすることで、自分の思い通りの音に近づいていきます。

上の2通り、どちらも「その人らしさ」ではあるのですが、自分の出す音に自信がなかったり、自分の持ち味はどこにあるのかがわからない場合は、この2つを分けて考えると少し見えやすくなるかもしれません。

まとめ

「リズム感を身につけたい」というのは、見方を変えれば「(持ち味を捨てて)パターンを単純にしたい」と言っているようなものです。

リズム感がどうかを考えて個性をなくすのか、いかに自分の音楽を大切にするかを考えて「その人らしさ」を伸ばしていくのか、という違いだと筆者は考えています。

筆者が主宰する音楽教室「音楽キッチン」では「その人らしさ」「持ち味」を最優先にしています。無料体験レッスンもあります。

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筆者
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小山和音
こやま・かずね

音楽教育の新しいかたち作り(創造性と個性を最優先に、音楽を教えず、評価せず、楽器や楽譜を自分でデザインしてゼロから音楽をつくるオンラインの音楽教室)と、音の生まれるしくみ作り(周囲の条件に反応して音楽や音声をリアルタイムに生み出すシステム開発)。

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