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作曲に楽譜は必要か?自分でデザインして作ってみよう

公開 2022年8月21日
更新 2022年8月21日
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「楽譜」と聞いてどんなものを思い浮かべるでしょうか?

おそらくほとんどの方はこれ(五線譜)でしょう。

Public domain

これはもともとヨーロッパで使われていたものですが、ヨーロッパの国々が世界に進出すると同時に、世界中に広まりました。

音楽の世界ではこれが当たり前の存在になっているので、音楽をやるためにはこの五線譜の読み書きができないと…と思いがちですが、それは気のせいです。

現代の日本や欧米ではこの五線譜が「楽譜」と呼ばれ、まるで世界にはこれしかないような気がしてしまいますが、世界にはこのようにいろいろな楽譜があります。

紀元前1400年頃の粘土板に刻まれた歌。古代都市ウガリット(現在のシリア北部)から出土。– Public domain
John Cageの楽曲”Waterwalk” By Chrisfred3 – Own work, CC BY-SA 4.0Link
Hans-Christoph Steiner氏による、楽曲”Solitude”の楽譜(一部)。音声プログラミング環境Pure Dataのデータ構造をもとに作られた。By The original uploader was Davigoli at English Wikipedia. – Transferred from en.wikipedia to Commons., GPLv2Link
20世紀初頭のインド音楽。By Unknown – Unknown, Public Domain, Link

つまりこれは、いつのまにか従ってしまっている音楽の表し方の一つでしかなく、この五線譜を使わなくても音楽を楽しむことはできます。

それなのにこの五線譜が当たり前のように使われているのは、明治維新をきっかけに日本の学校教育に取り入れられたのと、音楽の先生が商業音楽(ビジネスとしての音楽)と純粋な表現としての音楽を区別していないためです。

五線譜の読み書きと音楽の向き・不向き・才能とはまったく無関係

音楽の演奏から収入を得る人々の間では五線譜が共通言語のようになっているので、演奏によって対価を得るという視点から考えると、五線譜を読み書きする能力というのは必要なものと判断できます。

しかし、例えば純粋に音楽表現を追求していきたい場合、音楽の先生は「五線譜を使う理由」を考えていないことが多く、ビジネスとしての音楽と純粋な表現としての音楽を混同しがちです。

その結果、音楽を売らなくてもよい場面でも五線譜が使われ、純粋な音楽表現をするときにも「五線譜が必要だよね」という誤解が生まれ、五線譜の読み書きができない場合はそれを「音楽に向いていない」「才能がない」と捉えてしまいます。

読み書きができたとしても、五線譜以外にも記譜法があるという発想がないために創造性が活かされない、ということも起こります。

そもそも楽譜とは

まず、そもそも楽譜とは何か、というところから整理してみましょう。いちばん広く捉えると「音楽を視覚化したもの」や「音楽として演奏される前提の視覚的なもの」というような説明ができます。

例えば電線に鳥がとまっている風景は、鳥の大きさを音の大きさに、鳥の体の向きを音の種類に、電線の高さを音の高さに置き換える、といったルールさえ作ってしまえばそれは立派な「楽譜」になります。

つまり視覚的に音楽を伝えるという機能さえ果たしていれば、どのような形や色を使っても、平面でも立体でも、止まっていても動いていても「楽譜」と呼ぶことができます。

もちろんあなたも新しい記譜法をつくり出すことができます。

ただし楽譜を読むのは人間なので、人によってや、その日の気分や天気などによって少しずつ解釈の違いがあります。その解釈の違いを少なくしてできるだけあなた(作曲者)の意図に近づけたいか、それとも読み手に解釈の自由を与えるかを考えるのも、記譜法づくりの楽しいところです。

このように、捉え方次第で身の回りのものは何でも楽譜になってしまう可能性があります。

楽譜の目的

確かに楽譜は音楽を視覚化したものですが、それは他の音楽家が「読む」「解釈する」ものです。ということは、他の音楽家に視覚的に伝えたいことがない限りは、そもそも楽譜を使う必要はないということです。

例えば何人かで集まってまったく決め事のない完全即興演奏をするとき、「曲」を演奏するわけではないので、誰かに何かを伝えておかなくてもよい、つまり楽譜を使う意味はありません。

しかし人間が読むのではなくて、カメラを使ってコンピュータに読ませるということもできます。この場合、どのような状況でも同じ解釈をさせることができます。

楽譜の作り方

他人の考えた曲を扱わなければ、そもそも楽譜を読む必要がほとんどなくなります。

また音楽理論を自分で作った場合、オリジナルの音楽理論を表すには五線譜では無理があるので、新しく考えてしまいましょう。

ここでは、まず楽譜作りを体験してみるために、紙とペンがあれば作れるという前提で楽譜をデザインしてみます。

解釈の自由度を考える

楽譜は、読み手によって解釈の違いがあります。その解釈の違いを少なくしてできるだけあなた(作曲者)の意図に近づけたいか、それとも読み手に解釈の自由を与えるかを考えます。

例えばある音を表すのに「高い音」と書くのと「1000Hz」と書くのでは解釈の自由度が大きく違います。

対象とする楽器を意識する

どの楽器を対象に作った楽譜なのかをはっきりさせておきます。その楽器特有の記譜法(例えば回転する部分があるならそれを回転させる合図となる記号、どの程度のスピードで回転させるかを表す記号など)も考えておきます。

時間の流れる向きを決める

例えば、左から右。

音の高さの表し方を決める

例えば、色が青に近いほど高く、赤に近いほど低い。

音の強さ・大きさの表し方を決める

例えば、色が濃いほど強く、薄いほど弱い。

音の長さの表し方を決める

例えば、記号が長いほど音が長く、短いほど短い。

スピードの表し方を決める

例えば1秒を1として、1秒間に2回の枠を置きたいなら2、2秒で1回なら0.5など。

その他の表現方法を決める

例えば、哀愁など。この曲を演奏してほしい人に伝わる言語で書いておきます。

まとめ

自分の思い通りの楽譜がデザインできましたか?

この作業は一人でやるのとグループでやるのではまったく面白さが違います。例えばあなたの楽譜をあなた自身が読んで演奏したときと、他の人が演奏したときでは、出てくる音がまったく違うこともあります。

そのような体験を通して楽譜をデザインしてみると、また違った視点から音楽を見ることができるのではないかと思います。

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筆者
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小山和音
こやま・かずね

音楽教育の新しいかたち作り(創造性と個性を最優先に、音楽を教えず、評価せず、楽器や楽譜を自分でデザインしてゼロから音楽をつくるオンラインの音楽教室)と、音の生まれるしくみ作り(周囲の条件に反応して音楽や音声をリアルタイムに生み出すシステム開発)。

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