おすすめの「ライブ用耳栓」を、音楽家の立場からご紹介します。コンサート・ライブを聴きに行く方と、バンドとしてステージやスタジオに立たれる方の両方を対象としています。
もくじ
ライブやスタジオで耳を守るには、このような「ライブ用耳栓」をおすすめします。詳しくは記事の最後で解説します。
ヒトの耳に極端に大きな音が入ると、鼓膜の内側にある蝸牛(かぎゅう)というかたつむりのような形をした器官がダメージ(音響外傷)を受け、耳鳴りや聴力の低下が起こります12。
音楽関係者やライブに頻繁に通う方、あるいはイヤフォン・ヘッドフォンで大音量の音楽を聴く習慣がある方のように日常的に大音量にさらされている方は、特に注意が必要です。
筆者の周りで日頃大音量に晒されている方のなかにも、バンド練習やライブの後突然耳鳴りがひどくなったり、音が響いたりという症状の方がいました。もちろんその方々は耳栓をしていません。
こういった症状は音楽関係者やライブによく行く方の間で正しく知られておらず、知っていたとしても自分は大丈夫、と甘く見ていることが多いのではないでしょうか。それは耳栓をしている人がいかに少ないかが物語っています。
筆者も高校時代、狭い部屋に置いたドラムを長時間叩いたり、大きな音量でモニター(確認)しながら音楽制作をしたり、大音量の音楽をイヤホン・ヘッドホンで聴いたりということを日常的に行っていました。
するとある日突然耳の不快感に襲われ、一旦良くなったと思いましたがまた再発し、不快感のあまり一切音楽活動ができなくなり、数ヶ月に渡って入っていたすべてのライブをキャンセルしなければいけませんでした。
ひどい時には人の笑い声でもこの反応が出たことがあり、もちろん楽器は何ヶ月も弾けないし、音楽すら聴けませんでした。このまま耳が聞こえなくなるのだろうか?という恐怖と闘う日々を過ごしました。
筆者はここで耳の使い方を反省してEtymotic Researchの耳栓「ER20」を買い、なるべく大きい音を聞かないように注意しながら徐々に音楽活動を再開しました。
幸いこれは数年をかけてゆっくりと回復しましたが、ライブはもちろん、所属していたバンドのスタジオ練習では耳栓をしていても耳の不快感に襲われることが多く、仕方なく練習の後半にはよくスタジオを抜けさせてもらっていました。
趣味であればまだしも、音楽を本業としていた自分にとって音を長時間聴けないというのは死活問題であり、バンドの方々にも迷惑をかけてしまいました。
こうならないための唯一の方法は、「大きな音を聴かない」ことです。イヤホンやヘッドホンで音楽を聴く場合は音量を下げればよいのですが、ライブやスタジオなど自分のコントロールがきかない状況では耳栓をするしかありません。
目は閉じることができても耳は閉じられないので、これ以外に方法がありません。
ライブで耳栓をするのは失礼な行為なのでしょうか?
筆者は職業柄、音楽関係の友人が多いですが、耳栓が失礼だと言っている音楽関係者は見たことがありません。ステージに立つ側であった私ももちろん、そんな発想には至りませんでした。
個人的には、これは過剰なマナー意識が一人歩きをしてしまい、ステージに立つ人間は何とも思っていないのに、観客側が「失礼だからやめておこう」と一方的に遠慮してしまっている状態なのではないかと想像します。
誰かが本当に「失礼だ」と言っていたとしたら、きっとその方は音響外傷を負ったこともなければ、ステージに立てない悔しさや、仕事がなくなる不安、そして耳が聞こえなくなるかもしれないという恐怖を味わったこともないのでしょう。このような経験をして、そうならないための唯一のツールが耳栓だということを学んでいれば、こんな発言はできないはずです。
それに、「失礼」という感覚は主観的なもので、人それぞれ感じ方が違うものです。
たまたま「失礼」と感じる珍しい人に耳栓をしているところを見られたところで、私たちの人生には何の影響もありません。自分の耳の生死と比べたときにどちらか大切かで決めるとよいでしょう。
そもそも、
ということで、出演者から観客の方を見たときに、耳栓をしているかどうかはまずわかりません。安心して耳栓をしてください。
最近は公式グッズとしてライブ用耳栓の販売を始めた有名バンドもあるくらいなので、音楽関係者がようやく大音量の危険性に気づき始めたとも言えます。
耳栓を「マナー違反」としたり不快に思う音楽関係者は、認識が遅れていると言わざるをえません。そのような方は、自分の耳が壊れてからようやく過ちを認めることになります。
音の大きさをdB(デジベル)という単位で表します(数が大きいほど大きな音です)。
機械に聞こえる音とヒトに聞こえる音には違いがありますが、ヒトに聞こえている(ヒトの感覚に近い)数値で表したものは「A特性」と呼ばれ、dBの後ろにAや(A)が付けられています。
身の回りの音の大きさの目安は下記のとおりです。
値はすべて筆者が自身で測定したものです。測定対象によって異なる可能性を考えて、最も近い5dB刻みの数から±5dBの幅を持たせています(例えば92.3dBなら90dBとして、85〜95dBと表記)。
測定に使用したアプリはIEC 61672-1 class 2に準拠したNIOSH Sound Level Meterですが、スマートフォン内蔵マイクを使用しているため、正確性に欠ける(キャリブレーションされた測定用マイクや普通騒音計、精密騒音計などとは数値が異なる)可能性があります。あくまでも目安としてお考えください。
音の大きさ (Leq) [dB(A)] | 目安 (測定距離) |
---|---|
25〜35 | 静かな室内 |
40〜50 | 日中の住宅街 |
50〜60 | 図書館の館内 |
55〜65 | コンビニの店内 |
60〜70 | スーパーの店内 |
60〜70 | カフェ(コーヒーチェーン)の店内 |
70〜80 | ショッピングモールの構内 |
70〜80 | 大通り沿い(歩道上) |
70〜80 | 混雑した飲食店の店内 |
75〜85 | セミの鳴き声(3m) |
75〜85 | ドライヤー(1m) |
85〜95 | グランドピアノ(大屋根全開)(1m) |
85〜95 | 地下鉄の車内(急カーブ区間) |
90〜100 | ドラムセット(1m) |
90〜100 | 鉄道の高架下 |
一例としてWHO(世界保健機関)が作成したガイドラインでは、音を「安全に」聴くことができる上限を大人は1週間あたり80dB(A)を40時間、聴覚が敏感な人(子どもなど)は1週間あたり75dB(A)を40時間、と定めています3。
その上限値から計算すると、おおよそ次のような結果になりそうです。
音の大きさ [dB(A)] | 1週間あたりの限度 (大人) | 1週間あたりの限度 (子どもなど敏感な人) |
---|---|---|
75 | – | 40時間 |
77 | – | 25時間12分 |
80 | 40時間 | 12時間36分 |
83 | 20時間 | 6時間18分 |
86 | 10時間 | 3時間9分 |
89 | 5時間 | 1時間34分30秒 |
92 | 2時間30分 | 47分15秒 |
95 | 1時間15分 | 23分37秒 |
98 | 37分30秒 | 11分48秒 |
101 | 18分45秒 | 5分54秒 |
104 | 9分22秒 | 2分57秒 |
107 | 4分41秒 | 1分28秒 |
また、アメリカのNIOSH(国立労働安全衛生研究所)では、業務において1日にさらされる騒音の「限度量」を次のように数値化しています4。
音の大きさ [dB(A)] | 1日あたりの限度 |
---|---|
85 | 8時間 |
88 | 4時間 |
91 | 2時間 |
94 | 1時間 |
97 | 30分 |
100 | 15分 |
さらに、EU加盟国では8時間の平均が85dBを超える環境で働く労働者には耳栓などの防具の着用が義務付けられています5。
音楽ライブやスタジオ練習、クラブの場合、会場の特性やスピーカーの特性、イコライジング(音の成分調整)、スピーカーの音量、スピーカーからの距離、演奏内容などによって様々ですが、少なくとも90dB以上の音量に数時間晒され続けるケースが多いのではないかと思います。
ノルウェー科学技術大学のMorten Andreas Edvardsen氏がノルウェー国内50ヶ所の会場で行われた621回のコンサートを調査したところ、大部分のコンサートが15分平均で90dB(A)を超え、14%のコンサートは15分平均で102dB(A)を超えていた6とのことです。
これらの数値を基準に考えると、ライブやスタジオ練習、クラブなどは耳にとってかなり危険な環境であると言えるでしょう。
こうなってしまった原因は、ライブそのものの音量設定の感覚や基準が狂っている(音楽を純粋に楽しむために必要な音量をはるかに超えている)ことだと私は考えています。
音の聞こえ方は人によって違いますし、耳の形や大きさ、遮りたい音の成分や大きさ、耳栓を使うシチュエーションや脱着の頻度によって最適な耳栓は変わってきます。
一般的に耳栓は、例えば低い音はたくさん聞こえるが高い音はあまり聞こえないなど、音の高さによって聞こえ方が違います。
そのため、耳栓を選ぶ上では「どの高さの音をどのくらい遮れるか」が重要なのですが、これを測定・算出するときにメーカーによってばらつきが出ないように統一された規格が存在します。
を公表しています。
しっかりとしたメーカーならば測定結果をすべて表にまとめ、NRRかSNRのどちら(あるいは両方)の値であるか、どの規格に準拠しているかが明記されていますが、そのようなメーカーはあまり多くありません。
まとめると、ライブ用耳栓を選ぶ場合、筆者としては
これらの条件を満たしている耳栓をおすすめします。
NRRとSNRは算出方法が少し違うため、NRRの数値とSNRの数値を比べても意味がありません。比べる場合はNRR同士、SNR同士でなければいけません。
今回ご紹介する耳栓はすべてEN 352-2:2020に準拠したSNR値であると明記されているので、信頼できる数値とみてよいでしょう。
耳栓本来の遮音性能を発揮するには、耳栓を正しく装着する必要があります。装着方法はそれぞれの耳栓の取扱説明書をご確認ください。
耳に届く音が「安全な」範囲の音量に抑えられていれば、音楽ライブ用の耳栓としては(遮音性能の測定や算出方法が信頼できるものを選んでいる限り)「効果がある」といえるでしょう。
効果のある耳栓は、遮音性能の分だけ音をカットしてくれます。
例えば90dBの音が聞こえているとき、遮音性能が20dBの耳栓を正しく付けることで、理論上耳に届く音は90 – 20 = 70dBになります。
これは理論上の数値ですので、実際に耳に届く音にはある程度の個人差が見込まれます。
よく見かける使い捨て(スポンジタイプ)の耳栓はそれなりの遮音性能を備えているのですが、カットする音のバランスが悪い(例えば低めの音はあまりカットされないのに高い音だけカットされてこもった音になる)ため、演奏中に聞こえづらいパートがあったり、それをしたまま会話がしづらく、とても音楽向きとはいえません。
そこで音楽関係者や音楽好きの方には、ライブ用の耳栓をおすすめします。
こういったライブ用耳栓は音楽ライブやスタジオでの演奏を前提に設計されており、音のバランスを可能な限り保ったまま音量だけを下げてくれるため、ライブの醍醐味を犠牲にせずに済むし、音楽・音響の業務に支障が出ることもありません。
使い捨ての耳栓と比べると高く感じるかもしれませんが、一度買えばずっと耳を守り続けてくれるものです。音楽関係者や音楽好きの方へのプレゼントとしても良いかもしれません。
耳栓を英語で言うとイヤープラグ(earplug)なので、耳栓=イヤープラグです。
ライブ用耳栓は国外メーカーのものが多いので「耳栓」ではなく「イヤープラグ」と表記されていることも多い印象ですが、どちらも機能に違いはありません(この記事では「耳栓」に統一しています)。
ベルギーの耳栓メーカーLoop(ループ)のQuiet 2 Plus。
Loopの耳栓の中では最も手頃な価格でありながら、他社の耳栓と比べても高い遮音性能を誇ります。
よい意味で「耳栓っぽさ」がなく、アクセサリーに見えるデザインもLoopの耳栓の特徴です。
Quiet 2 Plusについてはこちらの記事で詳しくレビューしています。
音の高さごとの遮音性能はこのとおりです。
周波数 [Hz] | 63 | 125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ear Tipsの 遮音性能 [dB] | 23.3 | 24.1 | 20.9 | 21.3 | 25.9 | 31.0 | 33.0 | 24.4 | 26.0 |
Double Tipsの 遮音性能 [dB] | 26.0 | 26.0 | 25.6 | 24.5 | 24.6 | 33.3 | 31.6 | 36.3 | 27.0 |
アメリカ・イリノイ州の、イヤホンや耳栓を専門とするメーカーEtymotic Research(エティモティック・リサーチ)のER20とER20XS。
ER20とER20XSの遮音性能はほとんど同じですが、ER20は本体のステム部分が長くER20XSは短いという違いがあり、ER20はステムが長いぶんER20XSに比べると少し目立ちやすい一方、脱着はしやすいです。
筆者はER20を長年使ってきましたが、演奏のニュアンスや迫力は問題なく感じ取ることができ、耳栓をつけた状態でつけていない状態の音(実際に観客に届いている音)をイメージしながら音を出すこともできるようになりました。
音響外傷で苦しんでいた時期に使い始めましたが、耳は時間をかけて完全に回復したため、ライブ用耳栓としての効果・意味があったと言えます。
イヤーピースの大きさやフランジ(ヒダの数)によって製品が細かく分かれていてわかりにくいので、表にまとめました。
イヤーピースは直接耳にフィットする部分なので、耳が大きめの方はイヤーピースが「L」のものを選んでもよさそうですが、北米/ヨーロッパの人の基準で「L」となると、日本の人の耳には大きすぎる可能性もあります。
「UF」が付くものはイヤーピースのSとLがどちらも入っているので、そちらが無難かもしれません。ただしUFがあるのはER20XSだけで、ER20には見当たりませんでした。
画像をタップ/クリックすると商品ページにジャンプします。
メーカー | |
イヤーピース | 上の表を参照 |
フィルター | 内蔵(交換不可) |
ストラップ (首にかけられるヒモ) | 付属 |
専用ケース | 付属 |
カラー | クリア(透明) |
遮音性能の測定・算出規格 | EN 352-2:2020 |
音の高さごとの遮音性能はこのとおりです。
周波数 [Hz] | 63 | 125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ER20の 遮音性能 [dB] | 15.2 | 11.4 | 14.5 | 17.3 | 20.5 | 22.6 | 21.3 | 26.1 | 18.6 |
ER20XSの 遮音性能 [dB] | 14.8 | 10.4 | 14.2 | 17.7 | 18.9 | 21.0 | 20.9 | 30.3 | 18.5 |
プロフェッショナルの現場で数多く採用される業務用のイヤホン、ヘッドホン、マイクなどを手がけるドイツの音響機器メーカーSennheiser(ゼンハイザー)のSoundProtex。
低音〜中音くらいまではバランスよく高い遮音性ですが、それより高い音はあまり遮らなくなるという珍しい特性を持ちます。
3種類のイヤーピース(S、M、L)と2種類のフィルター(ミッドフィルター、フルブロックフィルター)が付属します。
メーカー | |
イヤーピース | S x 1ペア、 M x 1ペア、 L x 1ペア |
フィルター | ミッドフィルター、 フルブロックフィルター |
ストラップ (首にかけられるヒモ) | なし |
専用ケース | 付属 |
カラー | ブラック |
遮音性能の測定・算出規格 | EN 352-2:2020 |
音の高さごとの遮音性能はこのとおりです。
フルブロックフィルターの値は見当たらず、フェスやコンサートに適しているというミッドフィルターの数値で比較しています。
周波数 [Hz] | 63 | 125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
遮音性能 [dB] | 21.4 | 23.6 | 22.8 | 22.7 | 25.8 | 22.8 | 15.8 | 17.4 | 21.1 |
TPR(ホワイト)
BLK(ブラック)
オランダの耳栓専門メーカーAlpine(アルパイン)のMusicSafe Pro。
低い音はそれほど遮らず、高い音になるほどよく遮るようになります。
という3種類のフィルターが付属するため、例えば演奏のニュアンスよりも耳の保護を優先したい時はGoldを、ニュアンスを正確に感じ取りたいときはSilverを、というように状況に応じて柔軟に対応できます。
メーカー | |
イヤーピース | 内蔵(交換不可) |
フィルター | Gold x 1ペア、 Silver x 1ペア、 White x 1ペア |
ストラップ (首にかけられるヒモ) | 付属 |
専用ケース | 付属 |
カラー | TPR(ホワイト)、 BLK(ブラック) |
遮音性能の測定・算出規格 | EN 352-2:2020 |
それぞれのフィルターの、音の高さごとの遮音性能はこのとおりです。
周波数 [Hz] | 63 | 125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Goldフィルターの 遮音性能 [dB] | 15.7 | 17.8 | 19.2 | 21.4 | 22.9 | 27.3 | 27.4 | 29.4 | 22.6 |
Silverフィルターの 遮音性能 [dB] | 11.6 | 13.5 | 15.4 | 17.4 | 18.7 | 24.6 | 25.1 | 31.4 | 19.7 |
Whiteフィルターの 遮音性能 [dB] | 6.2 | 5.6 | 8.7 | 10.7 | 15.9 | 23.6 | 24.2 | 29.5 | 15.6 |
スウェーデンの耳栓メーカーEarLabs(イアラブズ)のdBud。
装着したまま開閉(遮音する量を調整)できる珍しい耳栓であり、今回ご紹介する耳栓の中では全体的に最も遮音性能が高いです(閉じた状態で比較しています)。
2025年7月現在、Amazonや楽天では販売されておらず、オンラインでは日本向け公式サイトから直接購入するしかないようです。
メーカー | |
イヤーピース | シリコン5種類(XS、S、M、L、XL) メモリーフォーム3種類(S、M、L) |
フィルター | 内蔵(交換不可) |
ストラップ (首にかけられるヒモ) | 付属 |
専用ケース | 付属 |
カラー | チャコールブラック、 ダスティピンク |
遮音性能の測定・算出規格 | EN 352-2:2020 |
開閉部を閉じた状態での、音の高さごとの遮音性能はこのとおりです。
周波数 [Hz] | 63 | 125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
閉めた状態の 遮音性能 [dB] | 23.8 | 21.4 | 21.6 | 21.0 | 24.4 | 30.7 | 28.0 | 27.5 | 24.8 |
開いた状態の 遮音性能 [dB] | 8.4 | 5.7 | 6.9 | 7.6 | 10.5 | 18.3 | 21.8 | 21.2 | 13.1 |
上でご紹介したグラフ(複数のフィルターや開閉機構がある場合は最も遮音値が大きい状態のもの)を重ねてみました。
グラフの左に行くほど低い音、右に行くほど高い音で、線が下にあるほど遮音性能が低く(あまり音を遮れず)、上にあるほど高い(音をよく遮れる)といえます。
つまりこの線が平らなほど、どの高さの音もバランスよくカットするということになります。
63 | 125 | 250 | 500 | 1000 | 2000 | 4000 | 8000 | 平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(Double Tips) | 26.0 | 26.0 | 25.6 | 24.5 | 24.6 | 33.3 | 31.6 | 36.3 | 27.0 |
14.8 | 10.4 | 14.2 | 17.7 | 18.9 | 21.0 | 20.9 | 30.3 | 18.5 | |
21.4 | 23.6 | 22.8 | 22.7 | 25.8 | 22.8 | 15.8 | 13.5 | 21.1 | |
(Gold) | 15.7 | 17.8 | 19.2 | 21.4 | 22.9 | 27.3 | 27.4 | 29.4 | 22.6 |
(閉めた状態) | 23.8 | 21.4 | 21.6 | 21.0 | 24.4 | 30.7 | 28.0 | 27.5 | 24.8 |
上記はすべてEN 352-2:2020に準拠したSNR値です。
このグラフから、シチュエーション別に耳栓を選ぶとしたら…
遮音性とファッション性を重視したい | ![]() |
低音の迫力を楽しみたい | ![]() ![]() |
高音のニュアンスを残したい | ![]() |
低音の迫力を楽しみたいが、 音のバランスも考えたい | ![]() |
高価でも利便性と遮音性、 音のバランスを重視したい |
確かに遮音性能が高ければ高いほど耳にとっては優しいですが、音楽関係者や音楽好きの方にとっては細かい音のニュアンスや迫力を犠牲にする可能性があるため、一概に遮音性能が高いものだけがおすすめとは言えず、どの程度の遮音性を求めるかで選ぶ耳栓が変わってきます。
また、装着感も耳栓によって、また人それぞれの耳の形によって変わってくるため、こればかりは使ってみないと何とも言えません。
筆者は上でご紹介したER20を買ってしばらくしてから、アメリカ・イリノイ州にあるイヤーモニターメーカーSensaphonics(センサフォニクス)のMusician’s Ear Plugsを使うようになりました。
このMusician’s Ear Plugsは補聴器店などで耳型を採って作るオーダーメイドのライブ用耳栓(日本でも耳型を採って注文できます)で、音のバランスはほとんど変えずに音量だけ下げてくれるだけでなく、自分の耳専用に作られているため長時間つけていても耳が痛くなりにくく重宝しています。
9dB・15dB・25dBカットのフィルターをそれぞれ左右別に選べるので、例えばヴァイオリニストは左耳用を15dBカット、右耳用を9dBカットというようにアレンジできます。
少し値段は張りますが、一生耳を守れると思えば安いものです。
また、この耳栓は肌色に近い色をしていて耳にすっぽり埋まるため、口を大きく動かしてもずれることがなく、装着していても外からはほとんど分かりません。写真映りを気にしなくても大丈夫です。
ただし上でご紹介した耳栓のように首からかけられるヒモは付けられないため、着脱の多い現場やさほど遮音の必要ない場面ではER20を使うようにしていました。
目は閉じられても、耳は閉じられません。
目をそむければ見えなくなりますが、耳をそむけても音は耳に入ってきます。
それなのに耳は目と同じように繊細です。
となれば、耳は自分で守るしかありません。手遅れにならないうちに。
音楽に関わり、音楽を愛するすべての方へ。
耳栓を強くおすすめします。
世界にひとつだけのオリジナルの楽器をデザインし、五線譜ではない楽譜やドレミではない音律をグループで話し合って作り、それらを使って音楽をゼロから創作する音楽教育プログラムを中心に、音(楽)にまつわるユニークな取り組みをしています。お仕事のご依頼やコラボレーションのご提案など、お気軽に!